読売新聞の感想

読売新聞を読んで思ったことを書きます。

2016年8月16日の読売新聞の感想

父の戦争 母の終戦9⃣ 戦犯、逃亡 奪われた人生

 作家・精神科医の帚木蓬生さんのお話。

 戦中、憲兵だった父とは、人生で数分しか話したことはないと言います。1960年代帚木さんが中学生だったころ、国語の教諭が目の敵のように「憲兵は悪だ」と言うのを聞き、帚木さん自身もそう思うようになったそうです。

 物心ついたときには酒・ばくち・女におぼれていた父・正之さんは、戦中、香港憲兵隊で諜報員をしていたそうです。通信傍受、人の拘束や拷問など、情報を得るためにはなんでもやっていたということです。そのなかで、英国人捕虜を拷問して殺してしまい、敗戦後指名手配を受けます。うまく逃げながら日本に戻り、国内でも逃げ回ったものの結局捕まってしまい巣鴨プリズンに収容されてしまいます。そのころ憲兵の死刑が続いていたそうで、正之さんも死刑を覚悟したに違いありません。しかし、香港の英軍事法廷の閉廷により原告不在となり、正之さんは釈放されます。それからというもの、自堕落な生活に陥った正之さんは、PTSDだったのだろう、と帚木さんは語ります。

 帚木さんは、このことを父・正之さんの元上官、元同僚の方から聞いたそうです。「何も語らずに死んだ父のこと、そして憲兵の実像が知りたくなった」そうです。そしてその話をもとに小説「逃亡」を上梓します。

 

逃亡〈上〉 (新潮文庫)

逃亡〈上〉 (新潮文庫)

 

  恥ずかしながら、戦争体験や戦争の実情については知識がないので、こういった具体的な話に触れるとびっくりするとともに、月並みながらやっぱり戦争は良くないなと思います。

 帚木さんの父・正之さんは、帰国後何度も悪夢にうなされていたそうです。戦後の扱いも、いわば戦犯としてお国に見捨てられた形となっている、ということも記事に書かれていました。人権もなにも、あったものではないですね。

 きっとこのことは、「逃亡」を読めばより深くわかるだろうと思うので、今度読んでみたいと思います。

 

解説スペシャル 中学生目線の福島案内

 福島市立岳陽中学校、福島第二中学校の生徒が「アクティブラーニング」の一環としてバスツアーを企画したそうです。その行程や実際の様子が描かれていました。24人の中学生が企画したバスツアーに関東を中心に18人のお客が集まったそうです。かなり練られていて、きわめて満足度の高い旅行になったと、実際に参加した記者は述べています。

 この企画は、文科省が標榜する「アクティブラーニング」の実験場と位置付けられた教育プロジェクト「地方創生イノベーションスクール2030」に参加している教師4人と生徒24人が考えたものだそうです。このプロジェクトは全国各地の中学・高校30校が、全国各地6グループにわかれてそれぞれ特色ある課題に取り組むものだそうです。

 こういった大きい規模の学習活動を題材に、密度の濃い学びの構造を解析し全国に広げるということが主旨だそうです。

 非常に良い話だと思いました。この間の学習指導要領が変わるという記事で強く推されていたアクティブラーニングとはどういうものなんだろうと思っていたのですが、こうして実戦的な課題を前に試行錯誤するというのは身になるし、良いと思います。きっと参加した生徒さんたちも充実感を味わっただろうと思います。

 でも、このような取り組みを全国各地でできる規模や形式に落とし込むのは大変ですね。ともすればただの職場体験で精一杯になっちゃたりするのではないでしょうか。

 

自分の世界 他社と共有は可能か

 東京大学教授・野矢茂樹さんが「心という難問」という本を出版したそうです。それにあたってのインタビュー記事が載っていました。

心という難問 空間・身体・意味

心という難問 空間・身体・意味

 

  記事で、いいなと思ったのは哲学や考えることの意味はなにか、ということについての言葉。

 「山登りが何の役に立つかと言われても答えに困るでしょう。その感じが一番近い。この本は何の装備もなく、哲学の山を一歩ずつ登れる。それは楽しいことのはずです」

 それは楽しいことのはずです。楽しいが先に立ってなにかしている人の言葉は素敵です。

 

おわりです。

昨日が終戦の日だったので、感想を書いた帚木さんの記事以外にも、戦争の話が多かったです。なんだか今日は読みごたえがありました。