読売新聞の感想

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2017年6月19日の読売新聞の感想

北朝鮮の市民生活分析

 伊藤亜人(あびと)東大名誉教授が、『北朝鮮人民の生活』(弘文堂)を刊行しました。その要約記事が載っていました。

 

北朝鮮人民の生活--脱北者の手記から読み解く実相

北朝鮮人民の生活--脱北者の手記から読み解く実相

 

 

 伊藤氏は、脱北者に、自由なテーマ・分量で何度でも手記を書いてもらい、見えてくる社会の実相を分析した。

  このようにして得た情報には以下のようなものがあったそうです。

 ・社会身分は世襲制で、職業や居住地の選択に自由がない

 ・「国の顔」である平壌からは、障害者は追放される

 ・大人は職場単位で自己批判などを行う毎週の「総和」に参加しなければならない

 また、意外なのが「北朝鮮社会は統制が厳しいというわけでもない」という事実でした。取り締まり側も、自分の生活や守る家族があるため、着服、賄賂、闇取引が横行しているそうです。そのため、誰も責任を取らない構造がそこにあるとのこと。このように、市民が日常的に不正をし、それを取り締まる側も不正をすることで互いにもたれ合った生活が成り立っていることが、北朝鮮の意外な堅固さを作り上げている、との分析になっています。この構造のもと北朝鮮では、自らの才覚で生き抜かなければならない、という意識が強くあるため、脱北して制度に守られた環境に入ると「生きるという実感がなくなった」と話す人もいるそうです。

 この「持ちつ持たれつの構造で、意外な堅牢さを醸し出す」という部分がとっても面白く感じました。たとえば、地震に対応する免震構造のように、衝撃に対して形を変えることで身を守る、ぐにゃぐにゃしているけどひとかたまり、という得体のしれないものがうごめく様子が脳裏に想像されました。

 北朝鮮は、私たちにとって謎の存在で、国家元首の動きは伝えられるものの国民の様子は「なんか貧困なんだろうなぁ」くらいのイメージしかない人が多いのではないでしょうか。当然ながら、国家があるということは国民がおり、その生活が営まれているわけなので、そこにはなんらかの文化や文明があります。そこにスポットを当ててまとめた書物ということで、かなり興味深いです。

 

おわりです。