読売新聞の感想

読売新聞を読んで思ったことを書きます。

2017年12月3日の読売新聞の感想

地球を読む 高等教育無償化は愚策

 大体毎日1面と2面にまたがる形で載っている記事です.今日は劇作家の山崎正和さんが,高等教育無償化について論じていました.

 山崎さんは,これまでの文教政策には高等教育を受ける「意欲と能力」に関する視点が欠如してきたと指摘しています.先の総選挙でも「貧しい若者」の進学への公費援助についての言及ばかりで,当人の進学意欲に関してはあまり触れられていなかったと.

 また,一次産業や伝統工芸の職人,軽工業など高等教育でなく専門の研鑽への道を選び取った若者には不公平で,それに対する救済策を講じるべきであるとも述べています.この不公平の救済策として,義務教育の充実を挙げています.現在の義務教育の内容水準はきわめて高いが,その「習得」への目線が欠如しているので,そこを是正すべきだと.具体的には,義務教育に卒業試験も留年制度もない点をどうにかしたほうがいいとのことです.シンプルに言うと,「卒業=能力の習得」ということにしようということです.そして,こういった義務教育を尊敬し,大卒だからとか,中卒だからとか学歴での待遇の差がなくなるようにしなければなる必要があるとも述べています.

 上記の点が固まれば,高等教育を受ける若者,高等教育を受けずに働く若者を,一様に職業とみなすような制度を視野に入れることができるようになる,と考えているそうです.文章のおわりに非常に身近でキツい話題に言及していて,強く同感したので引用します.

だが学問を職業と見なすと言えば,現在の日本にはこれよりはるかに喫緊の大問題がある.すでに大学院を修了して研究現場に立ちながら,臨時採用の身分で将来の不安な若い学者があふれているのである.学問への意欲も能力も完全に証明された,これらの人材を放置したままで高等教育無償化を説くことは不謹慎と言っても過言ではないだろう. 

  以前,友人が教育無償化についてブログで言及していたことも踏まえて思うことが出てきたので書きます.

homahi0128.hatenablog.com

 この記事でも,友人のブログでも,重要な点は「教育を受ける人の意欲と能力」です.高等教育が万人に価値あるものではないという点も,見逃せない点です.正直自分も教育無償化には反対で,その理由は大して勉強していない大学生が多く見えるからです.意欲のない者の意欲をどのように引き出すか,というような議論を高等教育機関で真面目にやらなければならない状況は異常です.

 ただ,「高等教育が価値あるものである」と誰も思わない世になったらどうなるか,を考えると少し寒気がするのも事実です.というのは,引用した記事のような状況が今より甚だしくなることが予想されるためです.日本では博士号は歓迎されません.一方で,伝統工芸の職人を志す若者が尊敬のまなざしを多く受けているかというとそうでもなさそうです.

 この状況の原因として考えられることがいくつかあります.

  1. 大して勉強せずに高卒・大卒資格を得ることができ,しかも学校で学んだことを直接生かした仕事ができている人が少ないこと(この立場の人は,より高い学歴をもつ人とより低い学歴の人の価値を低く見積もる)
  2. 大学院などの高等教育を受けた人が,そうでない人を低く見ること
  3. 若くから専門職に就いた人が,高等教育を時間の無駄とみなしてしまうこと

 いささかステレオタイプな見方ですし,もちろんこれに該当しない人はいるでしょうが,形成された世論を見るとこのように分解できるのではないでしょうか.特に1.に該当する人が多いのでおのずとその立場にいる人の声が大きくなります.だれしも自分の経てきた道を良いものだと思いたいものです.そこで自分の経た道のよさをプレゼンするのであればいいのですが,ほかを貶めることによって相対的に自らの価値を高めたくなってしまうのも人情です.価値が高まらなくては予算が得られないとなれば,易きに流れてしまうのも致し方ないとも思ってしまいます.

 現代は,専門が細分化されていて,門外漢にはちょっとやそっとじゃ触れないことが多すぎます.これも友人の言ですが,一部のエリートだけで政策を決定するような政治にするのも一つの手だと思います.

 

おわりです.