読売新聞の感想

読売新聞を読んで思ったことを書きます。

2018年1月27日の読売新聞の感想

昨日の新聞の感想です.

 

時の余白に エピクテートスの自由

 編集委員 芥川喜好さんの連載記事.

 カヌーのある選手が,ほかの選手に妨害行為を繰り返していた事件に関連し,現代社会の「勝つこと」に対する価値の肥大化について述べていました.彼が感じていた重圧が,許されざる行為につながったのだろうが,彼はどうすればよかったのか.「勝つこと」の社会的意味が過剰であることに警鐘を鳴らしています.形式や結果を重視して,その内容内実を問わない社会の空気に虚無感すらある,と.

 この風潮に重要な示唆を与えるものとして中野孝次さんの『「閑」のある生き方』という本の一節を引用しています.

人の価値を決めるのは,社会的地位とか,権力,財力,体力とか,人気とか,有名とか,そんな外にある価値ではない.エピクテートスが見るのは,その人が自分の力の下にあることにおいていかに立派に生きているかという一事なのだ 

 エピクテートスの「自分の力のうちにあって自由になるものと,自分の力の内になくて自由にならぬものを峻別せよ」という思想によった考え方です.人の評価のような力の及ばぬ部分は放っておいて,力をこめられることだけに集中することが重要だ,というメッセージが込められた記事でした.

 カヌーの選手の話から始まるこの記事を読んで,先般のオリンピックで優勝と目されていた女子レスリングの吉田沙保里選手が銀メダルに終わってしまったときに,「ごめんなさい」と涙を流していた映像をみて胸が痛んだのを思い出しました.多くの支援を受けているのだから勝たなければならない,という考え方もあることはわかっていますが....

 競技者のみならず,なんらかの仕事に従事する人は,多かれ少なかれ期待を受けます.その重圧感はそれぞれにちがうはずですが,無邪気な期待が人を苦しめることがあることを肝に銘じなければ,と思いました.そして,自分も,エピクテートスの言に従い,期待に潰されないよう気を付けていきたいと思います.

 

おわりです.