読売新聞の感想

読売新聞を読んで思ったことを書きます。

2017年10月25日の読売新聞の感想

日産「ぶっちぎれ」CM自粛

 矢沢永吉さんが出演する日産自動車のテレビコマーシャルが,一連の問題を受けて放送自粛状態だそうです.

 僕が見たことあるのは,永ちゃんが「やっちゃえ,ニッサン」って言ってるやつです.新聞で日産のニュースを見たとき,そのフレーズを思い出しながら「やっちゃったなー,日産」とひとりごちたのを覚えています.それ以来,CMどうなったのかなと思っていたらその記事が載っていたのでつい反応してしまいました.今は「ぶっちぎれ」なんですね.

 

Watchers 専門家の経済講座 「地方消滅」は東京のせい?

 日本総研上席主任研究員 藤波 匠さんの,地方産業に関する分析がまとめられた記事.隔週水曜日に,学者やエコノミストの経済分析が掲載される「Watchers」というコーナーです.

 「人口減と東京一極集中により,地方が消滅しかねない」という意見は本質でなく,問題は地方産業の貧弱さである,と述べています.実際のデータとしては,たとえば九州なら福岡,東北なら仙台と地方中核都市に若者が移住する傾向はあるものの,特別東京に人が流れ込んでいるというわけではない.東京に移り住んで定着した若者は,1割程度にすぎないとのことです.

 成果が出るかわからず,出てもいつになるかわからないので積極的に産業育成をする地方自治体は少ないようで,それよりも,手っ取り早く移住促進策をやって人を呼び込もうとしがちなのだそうです.「賃金が少なくても生活費がかからないから」という理由で移住する人なら集まるかもしれないが,そうではなく,きちんと収入を得られる産業を構築することが重要だ,というのが藤波さんの見解です.まず住居,ではなく,まず好待遇の仕事で人を呼び込めるよう,時間をかけて,たとえ一時期人口が減少するとしても産業を育てなければならない,と.記事中ではいくつかの成功例も紹介されていました.

 この藤波さんの意見は,肌感覚で正しいと感じます.今の自分も,「地元に帰りたい」という強い意志があれば帰れます.実家に住めるからです.しかし,今の自分の意識は「地元に帰れるなら帰りたいけど,今の暮らしの基盤のほうが全体的に豊かだし,向こうで一からここまでの暮らしを築き上げるのは大変そう」という感じです.地元の産業構造を正しく詳しく理解しているわけではありませんが,大企業の支所,小売,飲食店かそれ以外なら公務員くらいしか仕事が思いつきません.

 この状況は,「実家」を「安く住める家」に置き換えると,都会から地方への移住を促進する地方自治体の取り組みに当てはめられます.都会で暮らす立場から「産業育成してないので行きませ~ん」と言ってるのはなんだか無責任な感じもしますが,行かない理由としては十分なのです.こうしている間にも,地方の働き手の年齢は上がっています.うまい仕組みができない限り,その地方は本当に消滅してしまうのかもしれません.競争社会といわれますが,地方同士も大変な競争状態に置かれているな,と思いました.

 

読売歌壇・俳壇

 月曜,火曜と衆院選の特別な記事ばかりだったので,いつも月曜に載っている歌壇・俳壇が水曜日の今日になっていました.

 今週はこの歌に注目しました.

 空間にも坂はあるよと緩やかに舞いつつ下がる紙飛行機よ

 (高島市 宮園佳代美さん 選者:俵万智さん)

 見えないものをこのように表現するやり方は,ちょっと科学っぽいなと思いました.紙飛行機の動きを観察し,その結果「坂の存在」を仮定する.結果としてその仮説は否定されるかもしれませんが,科学の萌芽は表現にあることが強く意識されます.無粋でしょうか.

 俳句はこれが好きです.

 カマキリに椅子の一つを取られけり

 (益田市 斎藤市男さん 選者:矢島渚男さん)

 カマキリ,好きなんです.それと,その情景が説明がないのに具体的に浮かんできたので好きな句になりました.今回浮かんだのは,昼下がりのバス停でした.そしてカマキリは,威嚇態勢です.トンボも横切ります.この様子がバコン!と頭に去来した俳句でした.

 

おわりです.

2017年10月22日の読売新聞の感想

実に一か月ぶりの更新です.強い要望をうけ,放置もよくないなと思い更新します.このように書いた後にまた更新が途切れるという,まさにインターネット,と言わんばかりの展開にならないよう気を付けたい次第です.

感想とは全然関係ありませんが,昨日引っ越しました.きちんと手続きをしたとはいえ,転居した翌日から新聞を届けてもらえるのはうれしいですね.

 

8党公約比較

 引っ越しがあったので金曜に投票してきちゃってるのですが,各党の公約の比較記事をもとに,いいと思うところと悪いと思うところをまとめたいと思います.いいと思うところがない党もありますが,無理矢理ひねり出そうと思います.基本的に,目立つ野党は公約以前に公示前のいろいろな動きがダサすぎたので支持することはできません.取り上げる順序は,新聞に載っている順序です.

自民党

 原子力規制委員会の新規制基準に適合する原発の再稼働を認める,という方針を支持します.原発ゼロを掲げる政党は多いですが,再生エネルギーとか,新しいエネルギー源がどうとか言っていて,あまり現実的な感じがしません.リスクの源を排除して臭いものにフタ,という考えはあまり得策ではないと思います.適正な管理の方法と,事故発生時の対応をきちんととるようにすることをまず考えるべきです.急にすべてをなくすことはできない以上,アレルギー的に反対するのではヒステリーとおんなじです.

 低所得家庭の子供に限り高等教育の無償化を実現,という方針もいいと思います.すべての学費を無償化するというのは全く賛成できません.憲法に書き込むなんていう政党もありますが,もってのほかです.悲しいかな多くの学生は,勉強するために学校に行っていませんので.

 幼児教育の無償化を目指している,という点は疑問です.無償化というと聞こえはいいのですが,次のような意見を読んで,いたく共感したからです.“幼児教育の無償化というといいことのように思えるが,保育士の待遇はそれで本当によくなるのだろうか.保育サービスはそれ自体が利益を生み出すものではないので,政府や自治体による支援が不可欠である.保育サービスの利用料を無償化する穴埋めを公金からするだけにとどまってしまえば,保育士の待遇改善は全く望めないし,待遇改善までしようとすれば,そこにかかる費用が大きくなりすぎてしまう”

希望の党

 正社員化促進法(正社員雇用を増やした企業の社会保険料負担を免除)というのはいいと思います.正社員化促進の何らかの仕組みをつくろうというところがいいです.ただ,毎年採用しないような中小企業はどういう扱いになるのか,何をもって増やした,と判断するのか,など疑問があります.

 大阪,名古屋,東京を中心とする大経済圏「東海道メガロポリス」を誕生させるというのも,夢があっていいと思います.ただ,具体的なメリットデメリットおよび実現への道筋がわかりません.

 希望の党は基本的に夢の話ばかりしていて,現実感がありません.ユリノミクス,などとも言っていますが,その名前言いたいだけじゃないのかというくらい中身がわかりません.あと無意味な横文字が多く,日本語で言えよと思います.発足の経緯と,発足後の元民進党の人びとのうごめきがダサすぎて,政党としては終わってると思います.

公明党

 「消費税率の引き上げ」と「軽減税率の確実な実施」を掲げており,良いと思います.一回消費税上げるぞ,来年からだぞ,となったときに覚悟したので,上げるならはやく上げろ,という気持ちなんです.そのさい,過去に決めたことをきちんとやるぞと言っているのは信頼がおけます.

 地方でも都市部と同じように働ける「ふるさとテレワーク」を推進,というのもいいと思います.技術的には十分可能だと思うので,政策として広めてくれるととってもいいです.僕は都市部の人口をもっと日本中に拡散させたほうがいいと思っているので.ただ,機械を通さずに顔を合わせて会話したり意思伝達をすることは仕事において重要だとも思っているので,実際やってみたら嫌だな,と感じてしまうかもしれません.

 「19年までに幼児教育の無償化」を掲げていますが,自民党のところに書いたように,それはやめた方がいいと思います.

共産党

 むずかしい!!!

立憲民主党

 保育士,幼稚園教諭,介護職員等の待遇改善を掲げているところはいいと思います.また,震災復興に関しても,自主避難者を含めた避難者に対する支援を明確にしているところも温かみがあっていいと思います.財源は?とは思いますが.消費税上げないと言っているので.

 あと,この党は希望の党に行かなかった民進党の人たちの集まりです.希望の党に行った方の人たちは全員ダメだと思うので,膿を出し切ったこの集団は比較的まともなのでは,と感じます.

日本維新の会

 歳入庁の設置により歳入の管轄を一元化,というアイディアは,実用的なのでは,と思います.事務的に複雑だとおかしなことが起こることが多いので.また,解雇ルールを明確化というのもいいような気がします.原発に関して,現実的な廃止の段階を経ようとしているところに好感が持てます.市場競争に任せることと稼働のために都道府県の許可を得ること,としています.市場競争に敗れればなくなるけれど,何が何でもゼロと言っていません.

 ただやっぱり,教育無償化を憲法に明記というのはやめてほしいです.

社民党

 ブラック企業の規制強化,カジノ解禁に反対というところは実現させてほしいです.が,他のことはあんまりよくないと思います.

日本のこころ

 消費税マイレージ制度は,ユニークでいいと思います.消費税マイレージ制度とは,何らかの方法で買い物のたびに個人が支払った消費税をカウントして,支払額に応じて年金支給時に還付するという仕組みです.支払った税金の使い道が明確ですし,将来の給付が増えるなら,と消費が増える効果が期待できるのが利点です.また,個人消費の性向がデータとして得られるというのも経済に与える利点となります.しかし,個人の買い物一つ一つをきちんと把握する必要があるのと,それに抵抗がある人が多そうなのが問題点です.個人的には,平和ボケなのかもしれませんが自分の消費性向が把握されても全然かまわないので,抵抗感は少ないです.日本も最近の中国のように現金を使う頻度が少なくなれば消費税のカウントもしやすくなって実現に近づくのでは,と思います.

 

 自分が大きく興味があるのは,政治的にいえば「地方創生」なので,そういう色の濃い政策を行う党に頑張ってほしいです.しかし,今回の選挙の争点ではないので別のところで選択するしかありませんでした.

 

ニャるほど!社会保障 若い世代は損って本当?

 年金について,現在の高齢世代と若年世代の間に格差があるのか,ということを説明した記事.

 現在72歳の夫婦が平均余命まで生きるというモデルで計算すると,厚生年金を納めた額は1000万円で,受給額は5200万円となる(5.2倍).一方,現在22歳の夫婦であれば,厚生年金を納める額は3400万円で,受給額は7900万円となる(2.3倍).この差は大きいが,かつては年金がなかった親世代を養わなければならなかったなど社会情勢が異なることから一概に比較はできないことに注意とのこと.

 一概に比較できないとはいえ,なんか負担感大きいような気がするナァというのが正直な感想です.やっぱり高齢者の投票率が高いというのがこれに反映されてるんだろうなと思います.さっきの公約比較のところには書いてないですが,共産党の政策はもう高齢者のための党かよというくらいな雰囲気のものでした.

 自分は自分なので,しっかり働いて自分が食べる分は確保しよう,という感じで生きられたらいいのですが,やっぱり誰か助けてよ,という気持ちもあります.助かりたい.

 

おわりです.

 

2017年9月23日の読売新聞の感想

時の余白に 上を向くより足下を掘れ

 編集委員 芥川喜好さんの、芸術や芸術家に関する連載コラム。

 このコラムは、あるテーマについて、芸術作品や作者の生涯などを絡めて述べるものです。今回は、「場所」の話でした。僕は芸術の知識がないので、登場人物がどれほどすごい人なのかはわかりませんでしたが、一つ感想をもったので書き記します。

 「東京に出て働きながら美術に専念したい」。美術に限りませんが、このような考えは、地方生まれの人には共感しやすいかと思います。盛岡出身の現代美術家・村上善男さんは、二十代半ば、目をかけてくれていた岡本太郎さんに上記のような考えを伝えたところ、「お前はそこで闘え」と叱咤され、盛岡、仙台、弘前と東北を中心に活動をつづけました。北海道岩内の画家・木田金次郎さんは、師と慕っていた有島武郎さんの言葉で上京を断念したそうです。「東京に来た処が智識上に多少得る処ある計りで腕の上には何等の所得がないと思います」「その地に居られてその地の自然と人とを忠実に熱心にお眺めなさる方がいいに決つて居ます」

 僕も、なにかつかもうと北海道から東京に出てきたクチですから、上京を志した美術家さんの気持ちはよくわかります。一方で有島武郎さんの言葉にも一理あると思います。(有島武郎さん自身は結構いろんな場所に行って暮らしていたようなので、経験に裏打ちされた重みのある言葉というわけではないですが(笑))

 ただやはり、チャンスの多い土地にいって、競い合うことは成功から遠いこととは思えません。何をもって成功とするのか、に関しては議論があると思いますが、ここでは曖昧にしておきます。19歳から上京し、8年が過ぎた今、僕は東京の恩恵を享受しています。刺激が多く、面白い毎日を送っています。東京には「あり」ます。人・もの・雰囲気・熱があります。東京以外にはないのか、というと決してそうは思いませんが、その「濃度」はやはり下がると思います。

 化学の世界では、反応が起こるかどうかは「濃度」が重要です。濃度が高いことで、分子同士が衝突する確率が上がり、反応が起こるのです。これとおなじで、濃度の高い東京にいれば、何かが起こる確率が高いように思います。しかし、望まぬ反応が起きまくってもしょうがないので、意志は強く持っていなくてはならないというところが難しいところです。

 こと芸術に関しては、環境によってアウトプットが変わってくる気がしますから、「その地」に残るのは良いことにも思えます。とはいえ、都会に集まって成功した人もいるはずなので、何が最良かは結局、その人自身の志で変わるのでしょう。

 

おわりです。

2017年9月22日の読売新聞の感想

「努力は実る」赤ちゃん認識?

 大人が努力する姿を見た赤ちゃんは、我慢強く物事に取り組むとする研究成果が、MITの研究グループがサイエンス誌に発表したそうです。

 実験の概要は以下のとおりです。

 1. 被験赤ちゃんの半数に「大人が箱からおもちゃをたやすく(10秒で)取り出す様子」を6回見せた。残りの半数には「大人が箱からおもちゃを努力して(30秒で)取り出す様子」を2回見せた。

 2. その後、赤ちゃんに大きなボタン付きのおもちゃを渡し、その様子を観察した。おもちゃには、大きなボタンとは別に隠しボタンがついていて、隠しボタンを押すと音楽が鳴る仕組み。手渡す際に音楽を鳴らして渡す。

 結果は、事前に見た大人の様子の違いによって、ボタンを押して音楽を鳴らそうとする回数に2倍の差が出たそうです。大人が時間をかけておもちゃを取り出す様子を見たほうの赤ちゃんが多くボタンを押したそうです。この結果は、人が試行錯誤を行おうとする性質は後天的であることを示しうるものと言えるようです。

 ユニークな研究です。人の性格は育つ環境によって変わるだろうな、というのは感覚的に思っていました。このような実験をたくさんやって、人の性質のなかでも先天的なものと後天的なものがあるなんて結果が出たりすると面白いですね。

 

おわりです。

2017年9月20日の読売新聞の感想

民進「大義なき解散」

安倍首相が衆院解散に踏み切る意向を固めたことに対し、民進党は「大義がない」と批判しているようです。しかし、与野党からは「政権交代を目指しているのに解散に後ろ向きなのはおかしい」と冷ややかに見る向きもあるとのこと。

 民進党のこういうところが本当に嫌いです。批判の内容には「勝てそうなときにやっておこうという無責任解散だ」、「選挙で政治空白が生じる」「大義がない」というものがあるそうです。政治空白のことはまぁそうですが、やはり野党として政権交代の唯一のチャンスである総選挙を嫌がるというのはマジで終わってるな、という感想です。とりあえず批判しておけ、という感じが本当に嫌です。枝野代表代行は解散に前向きな意見を示したことは一応の救いではあります。

 蓮舫さんの時に、「対案路線」という言葉が出ていましたが、まったく内実が伴わず、前原さんになったときも同じ言葉が出ていましたがさっそくコレです。なんなんだ。

 

おわりです。

2017年8月18日の読売新聞の感想

訪日客 レンタカー事故防げ

 1面記事。国交省は、訪日外国人観光客の増加に伴って急増する外国人のレンタカー事故対策に乗り出すとのことです。国道や高速道路での急ブレーキなどの走行データを集め、事故が起きそうな場所を特定し、その地点にわかりやすい標識や看板を設置して事故の未然防止を図るということです。

 こういう情報に触れると、自動車教習の記憶がよみがえり、あれは本当に必要かつ十分なのか?という気持ちがわき上がってきます。道路標識の数々を学ばされ、それぞれの適切な意味を正しく認識して従えなければ威圧的な態度での注意を与えられて不愉快な思いをしながら取得した免許証ですが、その意味をきちんと理解していない状態の外国人が運転を許されているうえ、そのような人たちが理解できるような標識の準備が検討されています。そもそもからして自国民にもわかりやすい標識を工夫すればいいだけの話では?

 自動車教習への私怨が色濃く出てしまった見苦しい感想となってしまいました。

 

国際経済面 「言い訳探し」脱却の時

 日本の財政再建について書かれた記事。国の歳出と税収のバランスはいま、かなり悪くなっています。しかしながら、現状財政への危機感は高まっていません。正直自分も、国の借金が多くてヤバいらしいということは知っていますが、なにがどうヤバいのかはよくわかっていません。そんななか、日本のこれからをどうするかの方策の一つとして「シムズ理論」という経済理論に注目が集まっているそうです。簡単にまとめると、以下の引用文になります。

      1. デフレ脱却に向けて政府が増税を否定したうえで、財政支出を増やす
      2. 国民は増税に備えて貯蓄する必要がなくなる
      3. 「物価が上がる」との予測が広がり、その前にモノを買おうとして消費が増える
      4. 一時的に財政は悪化するが、物価上昇(インフレ)で税収が増え、財政再建にもつながる

  このシムズ理論。マジかよ、という気持ちです。記事でも指摘されていましたが、2.、3.が実際に起こるかというところが非常に疑わしいです。経済理論って、見ると大体マジかよと思っちゃうものが多いのですが、実際予測が当たった理論ってどれくらいあるのでしょうか。詳しい人に聞いてみたいところです。

 

愛なき世界

 一回もこのブログで感想を書いていませんが、第1話から欠かさず読んでいる三浦しをんさんの連載小説です。T大理学部で植物学の研究をしている女子大学院生(博士課程)が主人公の小説です。完結していない小説についての感想を書くのはアレかなぁと思って書いてなかったのですが、そんな制限自分で設けるのもアレだし、言いたさが溜まってきたので書きます。

 大衆小説として、理系女子(研究一本槍)とその恋を主軸に置いているのは、そういうものか、と思って読み進められます。そしてそのなかで、研究内容をわかりやすくかみ砕いて説明しようとする姿勢もいい感じです。キャラ立てのために、理系研究室によく「いそう」な面々をつくっているのも、物語を作るうえでは必要だろうと思われます。

 しかし、この小説を読んでいて気になるところがいくつかあります。

1.主人公の理系知識

 最近出てきたところに、「PCR電気泳動ゲルに直接触れるとあぶない」 というところがあります。これについて、主人公は「直接触れると危険らしいので」というように知識のない人に説明していました。ここで、主人公はその内実はよくわからないけれど、というニュアンスが含まれていたように読み取れましたが、PCR電気泳動ゲルを扱うような博士課程の学生がその簡単な原理を理解していないはずはなく、違和感がありました。また、タッパー容器のことを「無機物」と言っている場面もありましたが、有機物です。「主人公はどっぷり理系漬けでほかのことに全く興味が持てない一風変わった女子」というふうに話を進めているのに、かなり初歩的なところで知識が浅いと違和感がすごいです。

2.偏見みたいなものがすごい

 理系研究に携わる人は、一般の人に見られるような感情が表出されることは少なかったり鈍かったりしてアレだが、時には一般の人に見られるような感情を表出することもあり、そこのギャップがよい、というような描写があります。必ずしも筆者がそのような偏見を持っているわけでなく、物語としての面白さを出すための演出であるのだろうと思われますが、やっぱり偏見っぽくてあまり好きになれません。そもそも、感情の表出が少なかったり鈍かったりするのは、理系の思考プロセスを経る人に特有なわけではないのです。最終的に、たぶん主人公の女子大学院生は恋に落ちるのだろうと思われます。彼女にアプローチをかける料理人の男性は、理系の知識が皆無の、理系のことを全く知らない読者にとって寄り添いやすいタイプで、その人の情熱にほだされて...という結末が予想されます(もしこれと違う結末になったら、あっと驚きます)。そういう風にして、一般に理解しがたい考え方を持つ女性が、一般に近い形で落ち着く、という展開になってしまうと、偏見が助長されてしまっていやだなと思います。

3.とはいえ、欠かさず読めるくらい面白い

 批判的な感想が連なりましたが、でもこの小説は欠かさず読めるくらい面白いです。三浦しをんさんという小説家の筆力のなせる業でしょう。僕にとっては気になる部分が多いですけれど、理系の、特に生命科学実験系から遠い人には違和感なく面白く読めるのかもしれません。

 

おわりです。

 

 

2017年8月14日の読売新聞の感想

帰省で4日間新聞をためていました。ここしばらく、ほかに習慣づけてやることができたので新聞は斜めにしか読まず、したがって感想も特に浮かばない毎日でした。それはこれからもしばらく続きそうです。とはいえたまには書くか、という気分になることもあります。それが今日です。

 

読売歌壇

 今週の好きな歌はこれです。

 毛糸編む母に何でも話してた編み目数える邪魔してごめんね

 (交野市 山崎美加さん 選者:栗木京子さん)

 大人になって子供のころのことを思い出して、あぁあれは悪かった、とか、未熟だったな、と思うことは多いですね。その思い出の一つとして、編み物をする母とそばで話しかける娘の光景は、大変美しくみえます。ごめんね、という言葉の、いい意味での気安さがまたよいです。ごめんね、と言われる母は、そのことをよく覚えてないかもしれませんし、覚えていてもごめんねと言われる筋合いを感じないことと思います。この時期に詠まれた歌ですから、母はもう帰らぬ人なのかもしれません。そう思うとまた、違った感情が湧きます。

 帰省した実家で、ちいさな姪っ子たちと会って、たくさん話をしてきましたが、あの一場面一場面のどれかが、彼女らの記憶のどこかに住み着くのだろうか、と自分に重ねながら、この歌を味わいました。

 

おわりです。