読売新聞の感想

読売新聞を読んで思ったことを書きます。

2017年9月23日の読売新聞の感想

時の余白に 上を向くより足下を掘れ

 編集委員 芥川喜好さんの、芸術や芸術家に関する連載コラム。

 このコラムは、あるテーマについて、芸術作品や作者の生涯などを絡めて述べるものです。今回は、「場所」の話でした。僕は芸術の知識がないので、登場人物がどれほどすごい人なのかはわかりませんでしたが、一つ感想をもったので書き記します。

 「東京に出て働きながら美術に専念したい」。美術に限りませんが、このような考えは、地方生まれの人には共感しやすいかと思います。盛岡出身の現代美術家・村上善男さんは、二十代半ば、目をかけてくれていた岡本太郎さんに上記のような考えを伝えたところ、「お前はそこで闘え」と叱咤され、盛岡、仙台、弘前と東北を中心に活動をつづけました。北海道岩内の画家・木田金次郎さんは、師と慕っていた有島武郎さんの言葉で上京を断念したそうです。「東京に来た処が智識上に多少得る処ある計りで腕の上には何等の所得がないと思います」「その地に居られてその地の自然と人とを忠実に熱心にお眺めなさる方がいいに決つて居ます」

 僕も、なにかつかもうと北海道から東京に出てきたクチですから、上京を志した美術家さんの気持ちはよくわかります。一方で有島武郎さんの言葉にも一理あると思います。(有島武郎さん自身は結構いろんな場所に行って暮らしていたようなので、経験に裏打ちされた重みのある言葉というわけではないですが(笑))

 ただやはり、チャンスの多い土地にいって、競い合うことは成功から遠いこととは思えません。何をもって成功とするのか、に関しては議論があると思いますが、ここでは曖昧にしておきます。19歳から上京し、8年が過ぎた今、僕は東京の恩恵を享受しています。刺激が多く、面白い毎日を送っています。東京には「あり」ます。人・もの・雰囲気・熱があります。東京以外にはないのか、というと決してそうは思いませんが、その「濃度」はやはり下がると思います。

 化学の世界では、反応が起こるかどうかは「濃度」が重要です。濃度が高いことで、分子同士が衝突する確率が上がり、反応が起こるのです。これとおなじで、濃度の高い東京にいれば、何かが起こる確率が高いように思います。しかし、望まぬ反応が起きまくってもしょうがないので、意志は強く持っていなくてはならないというところが難しいところです。

 こと芸術に関しては、環境によってアウトプットが変わってくる気がしますから、「その地」に残るのは良いことにも思えます。とはいえ、都会に集まって成功した人もいるはずなので、何が最良かは結局、その人自身の志で変わるのでしょう。

 

おわりです。

2017年9月22日の読売新聞の感想

「努力は実る」赤ちゃん認識?

 大人が努力する姿を見た赤ちゃんは、我慢強く物事に取り組むとする研究成果が、MITの研究グループがサイエンス誌に発表したそうです。

 実験の概要は以下のとおりです。

 1. 被験赤ちゃんの半数に「大人が箱からおもちゃをたやすく(10秒で)取り出す様子」を6回見せた。残りの半数には「大人が箱からおもちゃを努力して(30秒で)取り出す様子」を2回見せた。

 2. その後、赤ちゃんに大きなボタン付きのおもちゃを渡し、その様子を観察した。おもちゃには、大きなボタンとは別に隠しボタンがついていて、隠しボタンを押すと音楽が鳴る仕組み。手渡す際に音楽を鳴らして渡す。

 結果は、事前に見た大人の様子の違いによって、ボタンを押して音楽を鳴らそうとする回数に2倍の差が出たそうです。大人が時間をかけておもちゃを取り出す様子を見たほうの赤ちゃんが多くボタンを押したそうです。この結果は、人が試行錯誤を行おうとする性質は後天的であることを示しうるものと言えるようです。

 ユニークな研究です。人の性格は育つ環境によって変わるだろうな、というのは感覚的に思っていました。このような実験をたくさんやって、人の性質のなかでも先天的なものと後天的なものがあるなんて結果が出たりすると面白いですね。

 

おわりです。

2017年9月20日の読売新聞の感想

民進「大義なき解散」

安倍首相が衆院解散に踏み切る意向を固めたことに対し、民進党は「大義がない」と批判しているようです。しかし、与野党からは「政権交代を目指しているのに解散に後ろ向きなのはおかしい」と冷ややかに見る向きもあるとのこと。

 民進党のこういうところが本当に嫌いです。批判の内容には「勝てそうなときにやっておこうという無責任解散だ」、「選挙で政治空白が生じる」「大義がない」というものがあるそうです。政治空白のことはまぁそうですが、やはり野党として政権交代の唯一のチャンスである総選挙を嫌がるというのはマジで終わってるな、という感想です。とりあえず批判しておけ、という感じが本当に嫌です。枝野代表代行は解散に前向きな意見を示したことは一応の救いではあります。

 蓮舫さんの時に、「対案路線」という言葉が出ていましたが、まったく内実が伴わず、前原さんになったときも同じ言葉が出ていましたがさっそくコレです。なんなんだ。

 

おわりです。

2017年8月18日の読売新聞の感想

訪日客 レンタカー事故防げ

 1面記事。国交省は、訪日外国人観光客の増加に伴って急増する外国人のレンタカー事故対策に乗り出すとのことです。国道や高速道路での急ブレーキなどの走行データを集め、事故が起きそうな場所を特定し、その地点にわかりやすい標識や看板を設置して事故の未然防止を図るということです。

 こういう情報に触れると、自動車教習の記憶がよみがえり、あれは本当に必要かつ十分なのか?という気持ちがわき上がってきます。道路標識の数々を学ばされ、それぞれの適切な意味を正しく認識して従えなければ威圧的な態度での注意を与えられて不愉快な思いをしながら取得した免許証ですが、その意味をきちんと理解していない状態の外国人が運転を許されているうえ、そのような人たちが理解できるような標識の準備が検討されています。そもそもからして自国民にもわかりやすい標識を工夫すればいいだけの話では?

 自動車教習への私怨が色濃く出てしまった見苦しい感想となってしまいました。

 

国際経済面 「言い訳探し」脱却の時

 日本の財政再建について書かれた記事。国の歳出と税収のバランスはいま、かなり悪くなっています。しかしながら、現状財政への危機感は高まっていません。正直自分も、国の借金が多くてヤバいらしいということは知っていますが、なにがどうヤバいのかはよくわかっていません。そんななか、日本のこれからをどうするかの方策の一つとして「シムズ理論」という経済理論に注目が集まっているそうです。簡単にまとめると、以下の引用文になります。

      1. デフレ脱却に向けて政府が増税を否定したうえで、財政支出を増やす
      2. 国民は増税に備えて貯蓄する必要がなくなる
      3. 「物価が上がる」との予測が広がり、その前にモノを買おうとして消費が増える
      4. 一時的に財政は悪化するが、物価上昇(インフレ)で税収が増え、財政再建にもつながる

  このシムズ理論。マジかよ、という気持ちです。記事でも指摘されていましたが、2.、3.が実際に起こるかというところが非常に疑わしいです。経済理論って、見ると大体マジかよと思っちゃうものが多いのですが、実際予測が当たった理論ってどれくらいあるのでしょうか。詳しい人に聞いてみたいところです。

 

愛なき世界

 一回もこのブログで感想を書いていませんが、第1話から欠かさず読んでいる三浦しをんさんの連載小説です。T大理学部で植物学の研究をしている女子大学院生(博士課程)が主人公の小説です。完結していない小説についての感想を書くのはアレかなぁと思って書いてなかったのですが、そんな制限自分で設けるのもアレだし、言いたさが溜まってきたので書きます。

 大衆小説として、理系女子(研究一本槍)とその恋を主軸に置いているのは、そういうものか、と思って読み進められます。そしてそのなかで、研究内容をわかりやすくかみ砕いて説明しようとする姿勢もいい感じです。キャラ立てのために、理系研究室によく「いそう」な面々をつくっているのも、物語を作るうえでは必要だろうと思われます。

 しかし、この小説を読んでいて気になるところがいくつかあります。

1.主人公の理系知識

 最近出てきたところに、「PCR電気泳動ゲルに直接触れるとあぶない」 というところがあります。これについて、主人公は「直接触れると危険らしいので」というように知識のない人に説明していました。ここで、主人公はその内実はよくわからないけれど、というニュアンスが含まれていたように読み取れましたが、PCR電気泳動ゲルを扱うような博士課程の学生がその簡単な原理を理解していないはずはなく、違和感がありました。また、タッパー容器のことを「無機物」と言っている場面もありましたが、有機物です。「主人公はどっぷり理系漬けでほかのことに全く興味が持てない一風変わった女子」というふうに話を進めているのに、かなり初歩的なところで知識が浅いと違和感がすごいです。

2.偏見みたいなものがすごい

 理系研究に携わる人は、一般の人に見られるような感情が表出されることは少なかったり鈍かったりしてアレだが、時には一般の人に見られるような感情を表出することもあり、そこのギャップがよい、というような描写があります。必ずしも筆者がそのような偏見を持っているわけでなく、物語としての面白さを出すための演出であるのだろうと思われますが、やっぱり偏見っぽくてあまり好きになれません。そもそも、感情の表出が少なかったり鈍かったりするのは、理系の思考プロセスを経る人に特有なわけではないのです。最終的に、たぶん主人公の女子大学院生は恋に落ちるのだろうと思われます。彼女にアプローチをかける料理人の男性は、理系の知識が皆無の、理系のことを全く知らない読者にとって寄り添いやすいタイプで、その人の情熱にほだされて...という結末が予想されます(もしこれと違う結末になったら、あっと驚きます)。そういう風にして、一般に理解しがたい考え方を持つ女性が、一般に近い形で落ち着く、という展開になってしまうと、偏見が助長されてしまっていやだなと思います。

3.とはいえ、欠かさず読めるくらい面白い

 批判的な感想が連なりましたが、でもこの小説は欠かさず読めるくらい面白いです。三浦しをんさんという小説家の筆力のなせる業でしょう。僕にとっては気になる部分が多いですけれど、理系の、特に生命科学実験系から遠い人には違和感なく面白く読めるのかもしれません。

 

おわりです。

 

 

2017年8月14日の読売新聞の感想

帰省で4日間新聞をためていました。ここしばらく、ほかに習慣づけてやることができたので新聞は斜めにしか読まず、したがって感想も特に浮かばない毎日でした。それはこれからもしばらく続きそうです。とはいえたまには書くか、という気分になることもあります。それが今日です。

 

読売歌壇

 今週の好きな歌はこれです。

 毛糸編む母に何でも話してた編み目数える邪魔してごめんね

 (交野市 山崎美加さん 選者:栗木京子さん)

 大人になって子供のころのことを思い出して、あぁあれは悪かった、とか、未熟だったな、と思うことは多いですね。その思い出の一つとして、編み物をする母とそばで話しかける娘の光景は、大変美しくみえます。ごめんね、という言葉の、いい意味での気安さがまたよいです。ごめんね、と言われる母は、そのことをよく覚えてないかもしれませんし、覚えていてもごめんねと言われる筋合いを感じないことと思います。この時期に詠まれた歌ですから、母はもう帰らぬ人なのかもしれません。そう思うとまた、違った感情が湧きます。

 帰省した実家で、ちいさな姪っ子たちと会って、たくさん話をしてきましたが、あの一場面一場面のどれかが、彼女らの記憶のどこかに住み着くのだろうか、と自分に重ねながら、この歌を味わいました。

 

おわりです。

2017年7月31日の読売新聞の感想

がん治療の明日1⃣ 遺伝子解析 最適薬ずばり

 近年、がん患者のゲノムについて、特定の遺伝子変異の有無を調べることで患者にとって最適な薬を選ぶ(がんゲノム医療)ことができるようになってきているそうです。その点に注目した連載です。

 抗がん剤治療では、がんが発見された臓器に「効いた実績がある」薬を使用していました。しかし、その薬が効くかどうかは個人差があり、運よく完治まで持っていける人もいれば、全く効かずにがんが進行してしまう人もおり、精度に問題があります。一方で、がんゲノム医療は、患者のゲノムを調べたうえでそれに効く薬を選べるので、効果が高い治療法です。これにより、無駄な投薬を防ぐことができるため、患者への負担はもちろん医療費の軽減にもつながります。

 この治療をする場合、患者の遺伝子解析を行う必要がありますが、日本では今のところ保険がきかず、一部の病院が研究目的や自費診療(40~100万円)で行っているにすぎないといいます。(来年度中に一部の病院での保険適用を可能にする制度導入を目指しているそうです)

 データが溜まってきて、実用化して大きな効果が得られるようになったということでしょうか。抗がん剤オプジーボの価格が高いこと一時期話題になりましたが、大変高額な薬代が大きく軽減される可能性があるので、早く一般的な方法として定着してほしいです。

 

おわりです。

2017年7月24日の読売新聞の感想

新卒採用 中小苦戦

 今年度の新卒採用で、中小企業が苦戦を強いられているそうです。人手不足のために大手企業が採用を積極的に行っていることもあり、売り手市場になっていること、学生の志向が大手に向いていることが原因のようです。

 そんななか、なかなか採用できない中小企業が、社員の採用や研修、入社後の生活支援などを他社と共同で進める取り組みが行われているそうです。合同研修を行ったり、2~3か月に一回、有志で懇親会やボウリング大会などを開催したりしているそうです。中小企業の新入社員は採用数が少ないため社内で孤立しがちなんだそうですが、このような取り組みにより他社の知り合いと交流でき、いい感じになっているとのことです。

 うちの会社は中小企業ですが、他社とのかかわりは全くありません。同期もなんとなく孤立してやめてしまい、僕一人になってしまいました。寂しい限りですが、上記のような取り組みがなされたらめんどくさくてかなわないナと思いました。わがままですね。

 

読売歌壇・俳壇

 今週はこの歌が好きでした。

 よく笑う孫二十歳つらかろうに看護師として歩み始める

 (福知山市 河野都さん 選者:栗木京子さん)

 孫への思慮の深さに打たれました。つらかろうに、とは。孫が生まれ、育ち、大きくなって職を得た。ここで、多くの場合「希望に満ちた未来へはばたけ」的な流れになりがちですが、そうはならない。しかもそれを、「よく笑う」孫に思う。孫が実際どのように思っているかは明らかではありませんが、ただ単純に笑っているのではなく、なにかを隠すような陰りを含んだ笑いなのでしょうか。そんなふうに、心配かけまいとする孫なのです。主体の持つ慈愛と孫のふるまいとの深みをぐいっと感じさせてくれる歌でした。

 俳句はこれです。

 夏の月些細なことを思ひ出す

 (新潟市 小泉浩子さん 選者:矢島渚男さん)

 俳句って、写真ですね。この写真、とってもきれいです。

 

おわりです。